「ここが、莉香ちゃんのお墓……」


「うん。そうだよ」


今は蒼井と2人、莉香が埋葬されているお墓にやってきている。


7月に入り、授業は午前までしかないから、学校からそのまま来たんだ。


蒼井がどうしても1度、お参りに行きたいと言っていたのと、真実を知ったあの日が、莉香の命日だったから。


「雨、そんなにひどくなくて良かったね」


「そうだな」


7月に入り、本格的な夏がすぐそばまで来ているのに、生憎今日は雨模様。

唯一の救いは土砂降りじゃなくて、しとしととした、静かな雨ってことかな。


「莉世、体平気か?」


傘の内側にいる私を、心配そうな顔で覗き込んできた蒼井。


「うん。
大丈夫だよ」


安心させるように強く頷くと、蒼井はそっか、と
目を細めて笑った。


実は、真実を知ったあの日から、莉香の人格が現れることは1度もなかった。


ずっと抱えていたものがなくなったからなのか、真実を知ったからなのかは分からないけど……


きっと、莉香のおかげだと私は思ってる。


莉香が私を、前に進ませようと、してくれたんだと。