ガクンと首が下に落ちて、完全に意識がなくなった莉世。



「莉世っ!!!
莉世っ!!!」


土砂降りの雨が当たり、どんどん冷たくなっていく莉世の体。


クソっ……!!


このままじゃ、莉世も俺も、冷えて風邪引いてしまうっ……!!


とにかく早く莉世の家に行くしかない……


なんとか莉世を片手で支えたまま折りたたみ傘を差し、抱きあげようとしたその瞬間。


「ん………」


「……莉世?
莉世っ!!
大丈夫か!?」


慌てて呼びかけると、そっと目を開き、こちらを見る莉世。


どこかぼんやりしているけど、顔色もいつも通りだし、特に体調が悪いわけでもなさそうで。



「莉世………」


そっと頬に張り付く髪を払いのけて、頭をなでる。


良かった………


ほんとに良かった……

一瞬意識が落ちたみたいだけど、また戻って。


心配で、心臓止まるかと思った……


ホッと心の中で安堵するも、傘の向こうは土砂降りの雨。


いくら意識が戻ったとはいえ、歩くのは難しいかもしれない。


「莉世、嫌かもしれないけど、俺の背中に乗って………」


確かにいつも通りだった。


声も顔も、髪型も。


だけど、違った。



「あ、おい……く、ん?」


「え……?」


「蒼井くん……だよね?
前に一度会った……」



言葉が、出てこなかった。

開いた口が塞がらなかった。


「り、莉世……?
なに、言って……」



なんで急に俺のこと、くん、づけで呼んで……


しかも前に一度会ったって、それじゃあまるで……


目の前にいるのは莉世のはずなのに。

ずっと莉世と話していると、思っていたはずなのに。



「蒼井くんこそ…なに、言ってるの?
私の名前は莉香だよ?」


「り、莉香って………」


「霧雨 莉香。
莉世の双子の姉だよ」


「っ!!」


嘘、だろ……?


ザーザーと雨が傘に当たる音が響く中、俺はその場で動けなくなってしまった。