「あ、蒼井、ここまででいい……」
電車を降りて、空を見上げればますます辺りは暗くなってきていて。
にわかだけど、風も少し吹いていて今に降ってきてもおかしくない。
すくそばまで、雨雲が近づいている匂いがする。
「っ……」
ふっと嫌な予感が頭をよぎって、蒼井の返事も聞かず、さっさとホームを出る。
「無理」
「は……?」
「だから無理だって。
家まで送る」
「ちょっ、話聞いて…っ」
早足で歩き出そうとした私の言葉を無視して、グイッと手を引っ張られる。
「は、離して」
「無理」
「離してよ……」
「なんで?」
「なんでって……」
そんなの、言えるわけがない。
「特に断る理由はないよな?
じゃ、このままで」
そう言って強引に歩き始める。
さっきの教室の雰囲気とは違い、不機嫌なオーラの圧力にそれ以上何も言えなくなる。
違う。
言えないんじゃない、
言えるわけがないんだ………
それを言うってことは、私の過去を話すのと同じだから……
どうか、雨が降りませんように。
家まで持ちますように。
そう、強く願うしかなかった。



