「うわぁ、綺麗……」


話がある、そう言った後、蒼井に連れられて来た場所は、駅からは少し離れた高台だった。


「ここ、穴場でさ。誰かに教えたの、莉世が初めてだよ」


「そうなんだ……」



私が、初めて……



柵の下に広がる街並みは、夜へと近づく夕焼けで、赤やオレンジのグラデーションに染まっている。


私の気持ちもまるで、昼から夜へと移り変わる夕焼けみたいだなぁ……


空が青から徐々に色を変えて黒に近づいていくように、いつしか私も蒼井一色になっていた。



嫌いから、好きへ。


クラスメイトから、好きな人へ。


気づけば、頭の中は蒼井のことしか頭になかった。


「それで、話って?」


柵に手を当てて景色を見ていた蒼井がふっとこちらを向く。


────────ドキっ



何を今から私が話すのかを、聞きたいような聞きたくないような、そんな葛藤が蒼井の中で行われているようで。


ゆらゆらと、どこか不安げに揺れる瞳。


「っ……」



それは、私の胸をぎゅうっと押しつぶすように圧力をかける。


今から蒼井に、もっともっとこんな表情をさせてしまうかもしれない。



大好きだからこそ、話さなきゃ。


伝えるって、約束した。


なのに、なのに………



ここまで来て、蒼井に嫌われたくない…そんな気持ちが顔を出して。


口に出したいのに。


言葉にしなきゃいけないのに。



恐怖が、不安が、どうしても打ち勝って。


声が、出てこない………


「莉、世?」



黙ってしまった私を心配するように伸ばされたその手が、頬に触れそうになったその瞬間。






「あははは!」


近くで女の子の声が聞こえた。