「そういう不意打ち、ほんとずるい……」
「い、意味分かんないからっ……」
片手で口元を隠しつつ、横目でこっちを見る、ムッとした様子の蒼井。
───────ドキッ
どこか拗ねた子供みたいな、恥ずかしいけれど、嬉しさが隠しきれていないような。
不覚にも、なんだか可愛いと思ってしまえるような、そんな表情。
反則なのは、どっちよ……
ふいっと視線を外し、前にある、今にも零れ落ちそうなほどフルーツが乗ったタルトを見つめる。
蒼井のあんな顔、初めて見た……
あー、もう……顔が、熱い。
その表情の原因が私にあるっていうのもそうだけど、恥ずかしいのはこっちの方……
いつもだったら絶対に言わないようなことを言ってしまったわけだし。
それによくよく考えてみたら、こんなに心から嬉しいと思ったのは久しぶりかもしれない……
「あ、またいつものツンデレ莉世ちゃんに戻った」
「う、うるさい!
蒼井はいちいち一言余計なの!」
「はいはい」
顔の熱を冷ましたくて、蒼井の方を見ないように取り皿にスイーツを取り始める。
ツンデレ莉世ちゃんって、なによそれ……
また調子のいいこと言っちゃって。
さっきの蒼井の表情……
あ〜、もう……、不覚にもドキっとしちゃったじゃない!!
「莉世のあんなに嬉しそうな表情見られて、俺はもうすでに腹いっぱいだけどな……」
胸の高鳴りが収まらない中、蒼井が満面の笑みで呟いていたことに、顔の熱を冷ますのに必死だった私は気づかなかった。



