「蒼井っ……、も、もうむりっ……」


「だーめ。
俺の言うこと、聞くって言ったでしょ?」


「だ、だからってこれはっ……!」


先程の甘ったるい雰囲気の続き……


ではなくて、一夜が明けた土曜日の今日。



……ん?


あれ?


ぎゅっと目を閉じて覚悟していた私に、予想していたことはいつになっても起こらず、


「莉世、なんで目閉じてんの?」


「は………?」


代わりに振ってきた言葉に目を開ければ、目に涙を浮かべてひーひー笑う最低男が。


だ、騙された……?


「いやー、あまりにも可愛い反応してくれるし、ツンデレな莉世がデレるなんて貴重すぎて、ちょっと意地悪したくなった」


そう言って私から手を離すと、また笑い始める。


また、やっちゃった……


この展開、これで何度目?


この男がプレイボーイだってこと、今の今まですっかり忘れてたわ。

前に一度プレイボーイじゃないって思ったことはあったけど、やっぱり嘘。


そうだった、そうだった。

元々女の子の心を弄ぶのが、だーい好きだったもんねー、蒼井は。


さっきまでの優しくてあたたかくて、どこか一筋の光のような存在の蒼井はどこにいったの?

意識しまくって、変に期待していた自分がバカみたい。


「ごめん、ごめん」


───────イラッ


いかにも悪いと思ってなさそうなヘラヘラ顔に、フツフツと混み上がってくる怒りで心が崩壊寸前。


そんな私を差し置き、蒼井は目元の涙(笑いの方)を拭って、ニヤリと笑う。


「今日はもうさすがに何もしないけど、俺へのご褒美はまだ終わってねーよ?」


「は?」


「明日1日、莉世の時間を俺にちょーだい?」


「……つまり?」


今にもブチ切れ寸前の私の頭に、にっこり笑顔で手をポンッと乗せる。



「俺とデートして」