「天野、くん……」

「こないだぶりだね、霧雨さん」


あたたかい空気を引き裂くかのように冷たい声。


学校内では声をかけないで、と。

関わらないで、と。


この間も、蒼井が委員長さんと行ってしまった後、伊吹と2人になった時に、あれほど言ったのに。


今度は私1人じゃなくて、蒼井も、歩優もいる時に来るなんて……


ゆっくりゆっくり振り返ると、伊吹はまっすぐ私を見ていた。


にっこり。

口元にゾッとするような笑みを浮かべているのに、笑ってないように見えるのはいつものこと。

冷え冷えとした雰囲気を纏い、そこに立っていた。


「今日、見てたよ。グラウンドで。
蒼井と、抱き合ってたよね」


「っ………」


グサグサと刺さる、鋭い視線。

威圧的な言葉。


伊吹の姿を見ているだけで、さっきまでのあたたかいものが、どんどん消えてなくなっていく。