ど、どうしてここに……

さっき、校舎の方へ行ったんじゃ……


「っ……」


心臓がドクドクと音をたてて、全身から嫌な汗が噴き出すのが分かる。


背中には突き刺さるような視線が注いで、逃げられないと瞬時に悟った。


「ちょうど邪魔者もいないことだし、今、話いい?」


邪魔者って、まさか……

おそるおそる振り返れば、案の定、思った通りの人物がいた。


目が合った瞬間、息が詰まったみたいに、声が出なくなる。



今1番、私の前に現れてほしくない人。

今1番、関わりたくない人。



「い、伊吹……」


「2人でちょっと、お話しよっか?
莉世?」


恐ろしいほどにっこり笑った表情、低い声に、再び私の背筋にゾクッとしたものが走った。