本当に彼は出来た人だ。…もしかしたら、屋敷の人の朝食の時間に起きなかった私を気遣い、わざわざ作ってくれたのかもしれない。
(明日からちゃんと起きよう。…今日だって、何か仕事をもらわなくちゃ。)
私は、前掛けを外して畳む伊織に尋ねる。
「あの…何かやることはない?掃除とか、洗濯とか…雑用でもなんでもいいんだけど…」
「雑用、ですか?…んー、屋敷には使用人がたくさんいますから。華さんがわざわざ働くことはないですよ。」
さすがに、ただ居座るだけなのは申し訳ない。伊織はこう言って笑ってくれるが、何か役に立っているという自覚がないと、落ち着かないのだ。
「神城家は、由緒ある家柄でしょう?…その、妻のしての役割とか、そういうのはないの?私、全然陰陽師とかの知識はないんだけど…」
すると、ぱちり、とまばたきをした伊織は、ふっ、と微笑んだ。そして、私を覗き込むように見つめる。
「…華さん。“妻”は、“仕事”じゃないですよ。」
「!」
「俺の奥さんは、いつも楽しそうに笑っていてくれればそれでいいです。」



