遠距離の彼 と 近距離の同期

おしぼりで目元を押さえてる所へ、グラタンとオムライスが届いた。

私は無言でそれを食べ、食べ終わると千円札を置いて席を立った。

後ろで小川天が何か言っていたが、無視をして会社に戻った。


途中、更衣室に寄り、涙で崩れた化粧を直して席に戻ると、もうそこには小川天がいた。

財布とスマホを仕舞おうと引き出しを開けると、中に裸の千円札が1枚入っていた。

隣を見ると、素知らぬ顔でパソコンに向かう小川天。

「あなたに奢られたくないんですけど。」

そう言って、私は千円札を彼の机の上に置いた。

「俺、デート代、割り勘とか嫌なの。
男のプライド?
くだらないけど、立ててやってくんない?」

そう言って、千円札を私の机に滑らせた。

「は!?
あれのどこがデートなのよ!!
ふざけないでよ。」

私が怒ると、

「お洒落なカフェで仲良くオムライスと
グラタンを食べる。
相手が宮本さんだったら、デートだろうが。
デートかそうじゃないかは、あくまでも本人の
主観でしかない。
デートかどうかは、俺が決める。
お前の主観はいらない。」

と訳の分からない理屈が返ってきた。

私はもう面倒くさくなり、黙って財布にその千円札をしまった。