デキる女を脱ぎ捨てさせて

「本当は彼氏なんていないですよ。
 いないって自分で言うと寂しくなるんで否定しなかっただけの見栄っ張りなんです。」

 今さらネタバラシした方が寂しさに虚しさも倍増だ。
 でももう嘘までついて恋人がいるフリをしたくない。

 しょぼんと打ちひしがれる私の肩を松山さんはバシバシ叩いた。

「ちょっと!泣けるじゃないの。」

「どこが泣きポイント?」

 声をひそめてつっこむ河内さんが私に愛想笑いを向けてその顔が引きつっている。

 ヤケ酒したい気分だ。
 誰か酒だ!酒を持ってこーい!!

 心の声に反応してくれる人はおろか、松山さんがトドメを刺すような一言をこぼした。

「支社長。誰か紹介してあげなさいよ。」

 は?支社長?倉林支社長?
 よりによって彼に話を聞かれたわけ!?

 もう煮るなり焼くなりどうにでもして……。

 モテて困り果てていそうな支社長に聞かれるなんて羞恥心で死ねそうだ。

 視界を横にズラすと見目麗しい倉林支社長が映った。

 毎回、この美しさをどう隠して近く潜んでいるのかが不思議だ。
 眩し過ぎて透き通って見えなくなっているって言われれば納得できてしまうくらい。

 魅惑の口元が曖昧に微笑んで控えめに告げた。

「私が立候補しようか?」

「…は?」