ロッカーに行くと携帯に着信があったことに気づいた。
 少し前の着信に折り返して電話を掛けた。

『お疲れ。
 花音。元気にしてた?』

 電話の相手は鈴村陽真(すずむらはるま)
 自然と頬が緩んで緊張がほどけていく。

「陽真こそ。最近どうなの?」

『まぁボチボチ。
 花音?浮気、してない?」

「なんの心配?」

『ハハッ。』

 軽い笑いに「全くもう」と心の中でため息をついた。

 ロッカーから荷物を取り出すと更衣室を後にする。
 着替えしなくて済むから楽なんだけど、服のチョイスは今一度、熟考しなくちゃな……。

 そんなことを考えつつ陽真との電話片手にエレベーターを待つ。
 エレベーターが移動して点灯する階の数字の動きを見るともなく眺めた。

『仕事はどう?忙しい?』

「うん。まぁ。
 今日も残業で、もう帰るところ。
 そういうそっちだって職場からかけてるんでしょ?」

『バレたか。
 体、大切にしなよ。』

「そうね。ありがとう。
 陽真もね。」

 電話を切ると温かい気持ちになってエレベーターに乗り込んだ。