蜜月は始まらない


◆ ◆ ◆


翌朝。
キッチンに立つ私はもうすっかり身体に染み付いた動きでオムレツを作りながら、脳内で激しい自己嫌悪に苛まれていた。

うう、ゆうべの私、あまりにも恥ずかしすぎる。

ひとりきりのときに実はコソコソ指輪をつけていたことももちろんだけど、錫也くんのシャツ持ったまま寝てたの、バレてるだろうし……。

偶然洗濯物を畳んでいるとき力尽きただけだって、思ってくれていないだろうか。

まあ、それは実際当たらずとも遠からずな言い訳なんだけど……故意に顔を擦り寄せていた分、罪悪感がすごい。

おまけに、錫也くんにわざわざベッドまで運んでもらっちゃったし。

完全に寝落ちする間際、なんとなーく、頭を撫でられた?ような気もするし……。

とりあえずどんな顔をすればいいのかわからなくて、今朝起きてからずっとこんな調子だ。

悩む心とは裏腹に、ふたり分のオムレツは綺麗に焼けた。

今度はサラダを用意していると、リビングから繋がる錫也くんの部屋のドアが開いてドキリとする。



「あ……お、おはよう、錫也くん」



少し、ぎこちなくなってしまった。

それでもきちんと顔を上げて挨拶をした私に、まだ少し眠そうな目をした彼が応える。



「……はよ、華乃」

「えっとあの、ゆうべ私、ソファで寝ちゃってたんだよね? ごめんね、疲れてるのにわざわざベッドまで運んでくれて」