その時はショックで何も言えずに智国くんの後ろ姿を見送った……。


黒くて暗いものが、あの時と同じようにあたしに迫ってくる…!



「夜神もさ、あいつのことどうせからかって遊んでるだけだろ。何が悲しくてあんな女を相手にしないといけないんだか。」


「まあ、確かに!それにあの外見だもんなー。夜神に見合う女子なんて田畑以外に星の数ほどいるだろうな。」




……………っ。




それはずっと思っていたことだった…。


夜神があたしを、本気じゃないってことを……。




でも、どうして!?



分かっていたはずだったのに、今はこんなにも傷ついている……。




あたしは居たたまれなくなって、その場から走り去ったのだった。








誰もいない木のベンチであたしは一人ぽつんと座っていた。


風がさあっと吹き抜ける。


日はとっくに沈んでいて、辺りで夏の虫達が音色を奏でている。


その中であたしはさっきの会話が蘇っては消え、また蘇っては……の繰り返し。




智国くん……、




別人のようだった………。




あたしと付き合っていた時は、あんな言葉使いなんてしてなくて、もっと大人しくて紳士的で他人の愚痴なんか言わない人だったのに……。



そのショックのせいなのか、頭がやけにぼーっとしてしまっていて放心状態。



「あ……。そうだ、花火……。」


この時初めて外が夜になっていることに気づくと、あたしはふと花火のことを思い出した…。



でも、今更戻れないよ。


智国くん達があの中にいると思うと、余計に戻れない。



戻りたくない……!!