「聡志、なんでピッチャー辞めちゃったの?」


とうとう聞いちゃった。ずっと抱いてた疑問、再会してから、聡志に聞きたいことや話したいことはいろいろあったけど、やっぱりこれが1番聞きたかったこと。


私に冷たいのは、今に始まったことじゃないけど、何度も言うようだけど、聡志という子は、あんなにとっつきにくい奴じゃなかったはず。


聡志が変わってしまった原因に、あれだけ好きだったピッチャーを辞めたことが全く関係してないとは、私にはどうしても思えない。というか、かなり大きな影響があったはずだ。


私の想像が間違ってなかった証拠に、私の問いに、聡志の表情が、明らかに歪んだ。


「聡志・・・。」


やっぱり聞くべきじゃなかったのかな、と一瞬後悔したけど、もう1回発してしまった言葉は取り消せない。


「ピッチャーとしての才能がなかった・・・としか言いようがねぇな。」


「ウソ・・・。」


そんなわけない。


「ピッチャーどころか、野球も辞めるつもりだった。」


「聡志・・・。」


あまりの意外な聡志の言葉に、私の方は言葉を失う。


「でも踏みとどまれたのは、お前のお陰。」


「えっ?」


なんで私が・・・?


「キャッチャーになったのは、当時の監督の命令。なんで俺がよりによってキャッチャー?ってその時は思ったけど、案外向いてたのかもしれねぇ。こんな性格だから。」


だから違うって。私がそう言おうとした時


「もう、いいじゃねぇか。」


という聡志の声と


「由夏、そろそろ失礼するわよ。」


というお母さんの言葉がほぼ同時に聞こえて来た。


「由夏、呼んでるぜ。」


「わかってる。」


「じゃあな、気をつけて帰れよ。おやすみ。」


そういうと聡志は私に背を向けた。


「おやすみ、聡志。」


私はそう言って、部屋を出るしかなかった。


結局、私の心のわだかまりは解決されることはなく、もう1つ伝えたかった言葉も、聡志に言うことが出来ずに終わってしまった。


「聡志、もう1回、幼なじみに戻ろうよ。」


って。