「それでは、白鳥先輩の大学決定を祝して、野球部の後輩を代表して、まずは1曲。」


こうして、学校帰りにカラオケボックスに繰り出した私達。沖田くんが口火を切って始まったパ-ティは、最初は私と沖田くんが先輩を巻き込む形で3人が盛り上がって、聡志と加奈はせっかくのデートを邪魔された形になった悠に、すまなそうにしているという、チグハグな雰囲気でスタ-トしたけど、悠はそんな心の狭い子じゃない。


「ねぇ、なんか食べ物頼もうよ。お腹すいちゃった。」


いかにも悠らしいことを言って、聡志達を和ませる。


「そうだな。じゃ桜井、俺達も曲選ぼうぜ。あいつらばかり、楽しませてもつまんねぇよ。」


「オッケ-。」


悠の気づかいと私達の熱気にあおられて、聡志も加奈もようやく乗り気になって来た。


食べ物も並び、マイクを奪い合うように、ひっきりなしで誰かが歌っている。宴もたけなわになって来た頃、私は、悠の隣に座った。


「悠、楽しんでる?」


「もちろん!」


2人で行動を共にすることが多かった私達は、こんなグル-プでカラオケに来る機会があまりなかったから、なにか新鮮。


「なんかウチらさ、先輩のお陰で、人脈広がったよね。」


「そうだね。考えてみたら、みんなとこんなに仲良くなれたの、徹くんがクラスに来てからだもんね。」


笑顔の悠にホッとするけど、私は悠に謝らなきゃならないことがある。


「ところで、悠。昨日はゴメンね。」


「由夏。」


「私、変なこと言っちゃって、気分重くさせちゃったよね。でも悠と先輩は大丈夫。私達とは違うから。」


「私達・・・。」


悠がハッとしたように、私の顔を見るけど


「さぁ、今度は一緒に歌おう!」


私は構わず、悠の手を引いて立ち上がった。


結局、5時間近く続いたこの催しは


「今度は、このメンバ-でどこか行こう。」


「賛成!」


なんて約束が出来るくらい、大盛況で終了。


カラオケボックスを出た私達は帰宅の途に着くけど、悠と先輩が2人で帰って行くのは当然としても、加奈と沖田くんも


「じゃ、私達、帰る方向一緒だから、じゃ、また明日ね。」


なんて言って、サッサと一緒に帰って行く。気が付けば、私は聡志と2人きり。確かに私達も、帰る方向一緒なんだけど、さ・・・。


「どうする、一緒に帰るか?」


「別に、どっちでもいいけど。」


「じゃ、行くか。」


さっきまでとは一転、私達は気まずい雰囲気のまま、歩き出した。