私はもはや、話す気力もなくなり、足取りも重く、自室に引き上げた。制服のまま、カタンと椅子に腰を落とした私は、窓の外に視線を向けた。


(何考えてるの?ウチの親。いや、聡志のとこの親もおかしいよ・・・。)


だいたい、誘う方も誘う方なら、誘われて大喜びしている方もどうかしてる。高校3年にもなって、親に頼るなって、言いたいのかもしれないけど、そうすると、私の方がおかしいのかな?悠や加奈や沖田くん達に聞いてみようかな、私自信なくなって来た・・・。


なんてバカなことを私が考えてると、携帯が鳴り出した。


「もしもし。」


「おい、一体どういうことなんだよ!」


挨拶も抜きに、飛び込んで来たのは、興奮しきった聡志の声。


「どういうことって、こっちが聞きたいよ。あんたの親から言い出した話でしょ?」


内容を確認するまでもなく、会話は成立する。


「受験間近の子供ほっぽり出して、揃って旅行って、あり得ないだろ!」


「よかった、やっぱりそうだよね。私、お母さんと話してるうちに、私の方が間違ってるんじゃないかと思っちゃったよ。」


「お前、何とぼけたこと言ってんだ。それだけじゃないだろ、留守中は由夏ちゃんが1人で心配だから、あんた由夏ちゃんの家に泊まってあげなとか、平気な顔で言いやがってさ。」


「ウチのお母さんも、そんなこと言ってた。」


私のこの返事に聡志のボルテージは更にアップ。


「はぁ?お前とこの親、大丈夫か?」


「正直あんまり大丈夫じゃないよね。」


「コーチは高校生の娘が男と一つ屋根の下で、2人きりになって、平気なのかよ?お前、親に愛されてるのか?」


「なっ?」


私、今日は、なんでこんな失礼なことばっか、言われなきゃならないの?厶ッとしている私に構わず、聡志はまくしたてる。


「とにかく、なんとかして止めさせねぇと。別にチケットの期限が来てるわけでもないみたいだし、よりによって今、旅行に行く必要なんか、どこにもないんだから。」


「うん、わかった。」


「俺も全力で止めるけど、お前も頼んだぞ。もし、このままだったら、俺はどうなっても知らねぇからな。」


そう言って、聡志は電話を切った。


通話が終わったあと、私はしばらく携帯を見つめていた。


(なんで、こんなことになっちゃったんだろ・・・。)


私は1つ、ため息をついた。