詩side

今私にはすごく気になることがあるの!

それは…

みんながワイワイお話する中

まだ一言も話してない男の子がいること!

奈留と一緒に来たから

錬や奏と同じお仲間さんなんだよね

みんなが話す中、私の視線は

彼に釘付けなのです!

黒髪で前髪をちょこんと結んだ可愛い髪型

綺麗な二重の真っ黒な目

背はこれまた大きい

人と関わるのが苦手なのか

奏の後ろに隠れるように机に腰掛けてる

だけど…

バッチリ見えちゃってて

隠しきれてないの!

それがなんだかすっごく可愛い!

男の子に可愛いなんて

嬉しくないかもしれないけど…

会話には入って来ないけど

チラチラ目線を向けたり

うんうんと頷いてみせたり

完全に拒絶してるわけではなくて

話しかければ返してくれそうな…

私のように声には出さずに態度でね

カキカキカキ…

≪初めまして、星川詩です。
錬や奏、それから奈留ともお友達に
なったの。
あなたともお友達になれる?≫

彼にそっと近づいてノートを見せてみた

ジーッと見つめて数十秒のあと…

「…(コクリ)」

ゆっくり頷いてくれました!!

思わず跳ねちゃった〜

相変わらず目線は合わせてくれないけど

彼にとってはすごいことなのかも

しれない…

だって、錬や奏や奈留が

びっくりしたかのように

大きく目を見開いてるんだもの!

カキカキカキ…

≪あなたの名前を教えてくれる?
無理に話さなくていいからね。
ここに書いて欲しい≫

彼にそっと渡すとゆっくり受け取り

書いて返してくれた

彼は何て名前なのかな〜?

どれどれ??

≪笹本冬(ささもとふゆ)≫

すっごく素敵な名前だぁ

静かにシンシン降る雪の景色が浮ぶ

うん、冬にピッタリ!

≪とっても素敵な名前だね!
静かに降り積もる雪の景色が見えた。
冬、これからよろしくね!」

笑顔でノートを見せると

ジーッと見つめて数十秒…

「…ぅん」

やっぱりまだ目線は交わらないけど

冬の声が聞こえた

すごく優しい声

男の子にしては少し高い柔らかな声

冬の手をそっと、そしてきゅっと握った

ありがとうが伝わるように…

そしてみんなに笑顔で振り向けば

みんなも優しく笑ってくれた

みんなとお友達になれて

私、すごく幸せだよ

みんなとお友達になりHRも

担任の先生の簡単な…というか適当?な

挨拶で終わり、入学式を無事終えました!

錬や奏、奈留、冬はHR終了と共に

風のように去って行って

今私は律と一緒に仲良く下校中です!

と言っても校門からは別方向だから

校門までだけどね〜

そうだ!子猫の里親さん探ししなくちゃいけないんだった!

律のお家はどうだろう?

鞄からノートを取り出し

カキカキカキ…

≪律、昨日子猫拾ったんだけどね
うちのアパートでは飼えなくて里親さん探してるんだけど…
律のお家は難しい?≫

立ち止まった律にノートを見せると

「ごめん、詩。
うちのマンションもペット禁止なんだ。
その代わり里親さん探し手伝うから」

≪ううん、気にしないで!
でも里親さん探し手伝って貰えるのは
すごく助かる〜!

連絡取りやすいように
アドレス交換したい!≫

「ふふ、もちろん。
見つかり次第メールするわね」

私は笑顔で大きく頷いた

これで早く里親さん見つかるといいな〜

校門でバイバイして真っ直ぐお家に

帰ったら、ベットで丸くなって眠る子猫の

傍にそ〜っと近付いた

早く里親さん見つけてあげるからね

もう少しだけ一緒に過ごそうね!