廉に目配せした。

その足で向かった屋上。
藤のこと、思い返していた。
確かに廉の言う通り、藤は強い女の子だけどただそれだけーー。
男に凄まれて泣かない女子はいない。
イライラしてたし、普段理性があるのに……あの場でやり過ぎた。

それに彼女は、美心の友達だ。

きっと、美心に伝わってるしーー

絶対、嫌われた。

俺は空を眺めた。
雲が急速に進む。

不意に空が隠れ、目の前が美心で覆われた。


「美心……なんでっ」


「梓が、行ってって」

藤が?

行けと?
なんで?

「青くんが、泣いてるかもって」

泣いたのは、藤だろう。

本当、バカ。

「泣いてない、泣いたのは藤で。
泣かせたのは、俺。

ごめんな、美心の大事な友達泣かせてごめん」

顔………見れなかった。

弱かったんだ。
美心に、嫌われたくなかった。

「梓が、ごめんねって。
でも、カップルショーは出てねって伝言を」

やっぱり、藤は面白い。

「ああ、藤の名誉のために出るよ」

そう。
藤を泣かせたお詫びに、カップルショーにはちゃんと出る。

そしてーーー。


「誰にもやらないからな、美心っ」

俺はそう言い美心を抱き締めた。