「今朝は私が鍵を開けたのに……不思議ですよね」

「……そうね」

不思議だけれど、それよりも先にすることがある。

黒板の前まで歩み寄り、黒板消しを手にとって白いチョークで書かれた文字を消していく。


後ろが更に騒ついた気がした。

これで私への疑いが少しは消えてくれるといいんだけど、それよりも誰も消そうとしなかったことが腹が立つ。

私が動けば、犯人も少しは焦るだろうか。おそらく犯人は私が浅海さんのために消すだなんて思っていないだろうし。

隣に気配を感じて振り向くと、薄茶色の髪の男子生徒がもう一つの黒板消しで文字を消してくれていた。


「て、天花寺様……」

「おはよう、雲類鷲さん」

いつの間に登校していたんだろう。あ、そっか。私が動かなくても、やっぱり彼が浅海さんを守ろうと動いてくれる展開だったか。