翌朝、登校すると教室が少し騒がしかった。

声を潜めて会話をしている生徒の視線の先は、私のすぐ後に登校してきた浅海さんに集められる。

もしかして昨日のスープ事件の影響だろうかとひやりとしたけれど、どうやら原因はまた別のことのようだった。

正面を向けば、深緑色の黒板に真っ白で乱暴な文字が書かれているのが視界に映り込んだ。チョークで書かれた心のない言葉に眉を顰める。


『消えろ庶民』

それはたった一人の人物へ向けられた言葉。

誰もが浅海さんに向けられたものだってわかってしまう。

浅海さんは驚いた様子で目を見開いて黒板を見つめている。それにしてもクラスの人は誰も消そうとしないなんて……。

ちなみに天花寺はまだいないみたいだ。

これは確か……原作にもあったような気がする。

それで真莉亜がヒロインを攻撃して笑うんだよね。「庶民なんて思い当たるのが一人しかいませんわー」って。