連絡先を開くと一番上に出てくる雨宮譲という名前が胸をチクリと刺した。

震える指先でそっとその名前に触れる。

瞳との婚約の話が進むのなら、もう連絡なんてしてはいけないとわかっている。


それなら、この感情はどこにやればいいのだろう。


「あれ? 雲類鷲さん?」

振り返ると天花寺が立っていた。

不思議そうに私を見ていた天花寺がわずかに目を見開く。

彼の視線の先には私の携帯電話。


慌てて、携帯電話をしまったけれど、もう見えてしまったようだった。


「雲類鷲さんは本当にこれでいいの?」

瞳と雨宮のことを言っているのだろうけれど、答えに困ってしまう。


「……私が決めることじゃないもの」

「そうだとしても、気持ちを伝えないままでいいの? まだふたりは婚約者ってわけではないよ」

息を飲み、じっと天花寺を見つめる。

どういう意味なのか、聞いていいものなのか迷っていると、天花寺が眉を下げて微笑んだ。