「ハルトさん、瞳って家柄とか気にするような子に見えますか? ハルトさんが水谷川の家の人だから好きになった子だと思いますか」
「……ずるい質問だね」
「その選択は相手の幸せを願ってしたことではなく、考えることをやめて逃げるための選択ですよ」
結局のところ最終的に決めるのは瞳自身だ。
それなのに瞳に選択肢を与えずに、突き放して終わらせようとしている。
ハルトさんの決断も本人が本当にこれでいいと思っているのなら、間違っているわけではないのだと思う。
けれど、話していて、そうは感じない。
「なにも持たない俺が彼女についてきてと言えると思う? 幸せにできると思う? ……今更俺を選んでなんて言うのは勝手すぎるだろう」
言葉の節々からハルトさんの想いが伝わってくる。
ハルトさんの想いに気づいていないなんて瞳も案外鈍いのかしら。
「瞳は幸せになりたいわけではなくて、ハルトさんの傍にいてほしいのではないでしょうか」
ハルトさんがどう動くのか、動かないのか。
瞳がどんな決断をするのかはわらかないけれど、無理に笑っている瞳は見たくない。……雨宮にだって本心から笑っていてほしい。
「一つだけ、瞳はハルトさんのスイーツに弱いと思いますよ」
にっこりと微笑んで人差し指を唇に当てる。
私の言葉にスミレは「ひらめいた!」と大きな声をあげて、目を輝かせた。
どうやらスミレさんはまたもやなにか思いついてしまったようだった。