「これは壁の独り言なので、雲類鷲さんがどんな答えをだすかは自由ですよ」

私の手に触れた浅海さんの指先は華奢で、少し体温が低くてひんやりとしている。

やっぱり女の子の手だった。



「あまり力にはなれないかもしれませんが、なにかあったらいつでも頼ってください。いつだってこの手を貸します」

それでも彼女は頼もしくてかっこいい友人だ。


「ありがとう。浅海くん」


けれど、笑った顔はとても可愛くて、温かくて、沈んでいた心を彼女に掬い上げてもらった気がした。




その日、私はフェイクとして登録していた<瞳>という登録名から<雨宮譲>に変更した。


もうかかってこないとわかっていても、消すことはやめた。


そう決めると少し心が軽くなったと同時に胸がぎゅっと収縮するように苦しくなる。


この気持ちも、変えることができればいいのにときつく目を閉じて願った。