蒼は欲しい犬種というのは特に決まっておらず、会ってから決めたいのだそう。

後日お父様と蒼で子犬を見に行く約束をして、<雲類鷲家、息子の初めてのわがままに大興奮事件>は一旦幕を閉じた。


ベッドに寝転がり、冊子『初恋想』の表紙を捲る。

部屋に入る前に蒼から「ようやく手に入った」と言われて渡されたのだ。

前々から気になっていたレケナウルティアというタイトルの小説が掲載されている号がやっと読める。


在庫があったはずなのに、まるで隠すように入手困難になってしまったこの号。


内容を一通り読んで、困惑で言葉を失った。


私も知っている人物の話にしか思えない。


けれど、まさかそんな……だとしたら私を恨んでいるのはあの人? 




思考を遮るように携帯電話の着信音が鳴り響き、びくりと身体を揺らした。




「し、心臓に悪いタイミング……」