「蒼はもっとわがままを言っていいんだぞ」

「そうよ。いつも遠慮してばかりじゃない。わがままの一つや二つ言ってほしいわ」

そういえば私も蒼のわがままって聞いたことがないかもしれない。


私はあれが欲しいとか小さい頃からわがまま放題だったけれど、

蒼は誕生日のときも欲しいものは特にないって言う。



「え、そんな……わがままなんて」

「蒼、この機会に欲しいものがあれば言っちゃいなさい!」


文芸部に入っている蒼のことだ。欲しい本の一冊や二冊あるだろう。

そう思って悩んでいる蒼の横顔をじっと見つめること約十秒。


なにかを思いついた様子の蒼が少し恥ずかしそうに俯いた。