「あら、天花寺様はご存知ですわよ。私に婚約者がいること」

わざとらしく笑みを浮かべると英美李様の表情が歪んだ。


「どうして英美李様がそんなに怒るのかしら」

「どうして! どうして貴女ばかり……っ! 天花寺様はどうかしているわ!」

激しく怒りを露わにしている英美李様が一歩階段を降りて私との距離を縮めてくる。

恋に狂ってしまった彼女は正気を失っているように見えた。



「天花寺様は貴女のものじゃないのに!」

「そもそも彼は誰のものでもないわ」

そういえば原作でも英美李様は天花寺のことを想っていて、浅海さんに食ってかかるシーンがあった。

ヒステリックに叫んで浅海さんを足蹴にするシーンがあって恐ろしかった。

そのあと彼らに成敗されていたけど。



「ずっと見ていたのに! 天花寺様のこと、ずっと好きだったのに! どうして貴女が好かれるのよ!」

「……そもそもどうして私たちが親しいと知っているのかしら」