姉さんのことは苦手だったけど、女の子が泣いているのはもっと苦手だった。

だから、泣き止んでほしくてこのときの俺は必死だった。


姉さんは薔薇を受け取って、ぎこちなく微笑んだ。


「できるかしら」と消えそうなくらい小さな声で呟いてから、目尻に残った涙を拭うといつものように強気な瞳が戻ってきていた。


それからだった。姉さんが俺に懐くようになって、本当の姉弟のように過ごすようになった。



幼かった俺は家族を亡くしたことから悪夢を見ることが多くて、あまり眠れないことが多かった。


隈ができていることに気づいたらしい姉さんは頻繁に部屋を抜け出して、枕を抱えて俺の部屋にやってくるようになった。



『……姉さん気にしなくていいよ。一人で寝れる』

『いやよ! お姉様だもの』