「あ、お兄ちゃんおかえり。早かったね」

居間に姿を現したのはメガネを掛けた男の人だった。


「ああ、バイト昼までだったから。……お客様か? 珍しいな」

この人はおそらく原作では出てこなかった浅海さんのお兄さんだろう。

つまりは花ノ宮学院の卒業生だ。



「おじゃましております」

なんだか少し嫌な予感がするものの、きちんと挨拶をした。

お兄さんはどこかぎこちない微笑みで「こんにちは」と挨拶を返してくれた。



「雲類鷲さん、お茶のおかわりはいりますか?」

「ええ、ありがとう」

お湯を沸かしに台所へ浅海さんが消えた後、お兄さんが硬い表情で「雲類鷲ってまさか……」とつぶやいているのが聞こえた。


まあ、そうなるよね。

理事長と同じ名字だし、私の服装とかを見ていれば察しがつくだろう。