頭の中で前世と今世の記憶が次々に一致していき、血の気が引いていく。


前世で読んだことのある漫画で、同じ名前のキャラクターを知っている。

すっごく嫌な意地悪令嬢の雲類鷲 真莉亜(うるわし まりあ)。


同い年の義弟の名前は雲類鷲 蒼(あお)。

舞台は私立 花ノ宮学院。

いやいやいや……嘘だよね。本当にここはあの世界と同じなの?

でも思い当たることは多数ある。



花ノ宮学院の理事長は真莉亜の伯父。

はい、一致。


初等部と中等部は男女の校舎が分かれている。

はい、一致。


まだ関わったことはないけど、男子で絶大な人気なのは天花寺(てんげいじ)率いる三人組。

はい、一致。



ごくりと生唾を飲み込む。



「夢、じゃないんだよね」

「姉さん、何言っているの? プールで溺れて、意識失ったんだよ。体調は大丈夫?」

おかしな感覚だ。今まで弟として一緒にいたはずなのに、ああそっかこの人漫画のキャラと同じだなって心の中にすとんと何かが落ちてきた。


今まで妙な違和感はあったんだ。蒼と始めて会って、名前を聞いたとき既視感を覚えたし。



「聞こえてる?」