「姉さん、どうかしたの?」

朝食が終わり、ぼんやりと庭を眺めていると準備が終わったらしい蒼が不思議そうに私の顔を覗き込んでくる。



「今日から学校だから、楽しみなのよ」

「……そう? なんかすごく鼻に皺が寄っていたから、なにか嫌なことでもあったのかと思った」

「え」

鼻に皺が寄ってた!?

それものすごくひどい顔していたんじゃないの!?


「まあでも、よくその顔してるよね」

「え」

……よくその顔してる?

お姉ちゃんの名誉のためにその顔をしているときは注意していただきたいんだけど!



「それより姉さん、遅刻するよ。早く行こう」


夏休みが終わり、今日から二学期が始まる。

一昨日はみんなに誕生日を祝ってもらい、昨日は家族に華やかな薔薇が咲き誇るガーデンレストランでお祝いをしてもらった。


けれど、幸せな日常に毒が一滴垂らされた。


海老原くんから届いたメッセージには不穏なことが書かれていたのだ。


彼からの情報は確かだろうから警戒しなければいけない。


もしかしたら蒼に迷惑をかけてしまうのかもしれない。そのことが一番不安だった。