名前を呼ばれて慌てて顔を上げると、いつもどおりの仏頂面の桐生拓人が立っていた。

このあいだの笑顔は幻だったのか。



「ど、どうしてここに」

「景人に補習だって聞いたから」

「……そう」

あのあと二人は会話をしたってことね。

どんなことを話したのかは知らないけど、会話をしたのならよかった。というか、桐生は私に会いにわざわざここに来たってことだよね。


「それで私になにか用事ですか?」

「ありがとう」

「へ」

桐生の突然の発言に変な声が漏れてしまった。

なにについてお礼言われているのかわけがわからず、眉根を寄せて首をかしげていると桐生は目の前の椅子に腰をかけた。


彼の顔がこんなに近いことは珍しいかもしれない。

こうして見るとやっぱり整ってるなぁ。それに景人と兄弟なだけあって顔のパーツは似てる。