『忍法☆すっぱいでござる』の袋を開けると、細長いプラスチック容器に並んでいる三つの丸いガム。二つは甘くて、一つは驚くくらいすっぱいのだ。


「ルールを説明します」

「え?」

「ちょっと、待って。スミレ、ルールなんて聞いてないけど」

「これは、ただ食べてすっぱいハズレ!というゲームではございません」

おそらく彼女が勝手に作ったであろうルールを真面目な表情で説明される。


「すっぱいハズレガムに当たった人は……全力の変顔をしていただきます」

へ、変顔って……お嬢様が変顔できるの? 頬膨らましたりする感じなんだろうか。


「生ぬるい変顔は許しません! ほっぺた膨らましてぷぅなんてしたら、鼻に割り箸突っ込みます」

今、恐ろしい言葉が聞こえてきた気がする。


「全力で表情筋を使った変顔を披露してください。それでは準備はよろしくて?」

こうして、私とスミレ様、瞳様による第一回『忍法☆すっぱいでござる』勝負が幕を開けた。

まずはジャンケンで勝った瞳様が選び、次に私。最後にスミレ様。一斉に口の中にガムを放り込み、咀嚼する。


「!!」

まずガムの甘みを感じたあと、噛み砕かれた中から口内を刺激する酸味に襲われた。顔の中心に一気に皺が寄るほどの衝撃。

こ、これは酸っぱすぎる! こんなに酸っぱかったっけ!?