「さあ、スミレ言ってごらん」

「……お、お菓子作りを……教えてください! ハルトお兄様!この野郎」


最後汚い言葉がついていたけれど、ハルトさんは満足したらしく録画を終えて頷いた。

私はハルトさんの後ろに回り込み、ビデオカメラを奪い取る。


「え、ちょ、瞳ちゃん!?」

「あまりスミレをいじめないでくださいね。それとスミレではなくて、作り方を教わるのは私です。私に作り方を教えてくれますか?ハルトさん」

「……もちろん。瞳ちゃんになら協力させてもらうよ」

そんな調子のいいこといって、私が奪ったビデオカメラを返してほしいだけのくせに。

わかってるけど、そんな風に言われて喜んでしまう自分がいて緩みそうになる表情を引き締める。


ハルトさんは私を喜ばせる言葉をさらりと言うからずるい。

私のことなんてまったく眼中にないってわかっていても、諦めきれないのはハルトさんといると特別扱いされているような気になってしまうからだ。




本当厄介な人を好きになってしまったな、私。