※東雲流音視点



話してしまった。……話してよかったんだろうか。

紅薔薇の君は、時折私の頭を撫でながら優しく話を聞いてくれた。

その手は昔たっくんが撫でてくれたことを思い出してしまった。


彼女は少し、いや大分変な人だ。

花会での上品な微笑みとは違い、少人数で話していると表情がコロコロと変わる。

鼻にシワが寄っておじさんみたいな顔になったり、「おほほ」なんて言いながら鼻の下を伸ばして間抜けな顔になったり、見ていて飽きない。

菫の君曰く彼女は変顔が得意らしい。


東雲家の迎えの車に乗り込み、うさぎのパペットを抱きしめながら窓の外の景色を眺める。


日本舞踊も、琴も、書道も父に言われた通りにやってこなしてきた。


それなりに結果を出していたけれど、いつも褒められるのは私よりも結果をだしていないはずの妹だった。