「これは……たっくんがくれたんだ」
「桐生様が?」
うさぎの人形と桐生ってミスマッチすぎる。
ちょっと笑いそうになったけど、今はそんな空気じゃないので顔を引き締める。
流音様の話によると、小さい頃から人と話すのが苦手で人見知りだった流音様は周囲から疎まれ、陰口を言われていたらしい。
東雲の姉妹は優秀だが、長女は次女に比べて暗くて不気味だと言われ、向けられる冷ややかな視線に更に萎縮してしまっていた。
そんな流音様に声をかけたのが、桐生拓人だった。
偶然にも同じパーティーに招待され、庭で一人で遊んでいた桐生が近寄ってきたらしい。
最初は怖がっていた流音様に桐生はポケットから、小さなうさぎの人形を取り出して『こんにちは!』なんてうさぎのフリをして話しかけてきたんだとか。
緊張が解けた流音様は桐生とは話せるようになり、時折一緒に遊ぶ中になった。
そして、六歳の誕生日のときに誕生日プレゼントにくれたのがうさぎのパペット人形。
それ以来流音様は大事にしてきたらしい。