「っ、笑うななんて大事な人に、母親に言われたら、うまく笑えなくなるに決まってる。それから……家族以外の前でもたっくんの笑顔はぎこちなくなって、笑い方が思い出せないって……苦しんでた」


ぽつりぽつりと、彼女自身もぎこちなく辛い過去を思い返すように話し出す。



「私は、なにもできなかった。……近づけば、もっと彼を傷つけてしまいそうで……今度こそ壊れてしまいそうで……遠くから見守ることしかできなかった」


パペットちゃんの、流音様の表情が変わる。

眉根を寄せて下唇を噛み、膝の上に置かれた手はぎゅっと握り締められている。



「でも、アイツは……天花寺は彼に『無理して笑おうとしなくていい』って言ったんだ。私には言えなかったことがさらりと言える天花寺に腹が立った。こんなの八つ当たりだってわかってる! でも……っ悔しくて、あの時のたっくんを救ったアイツが羨ましかった」

立ち上がり、向かい側のソファに腰をかける。きつく握られた流音様の手にそっと触れる。



「桐生様にきっと気持ちは伝わりますよ」