「それは私から先生に提出しておくよ。だから、あなたたちは鐘が鳴る前に教室へ向かって」
興味津々といった様子で群がるお嬢様方を鎮めたのは、瞳様のよく通る声だった。
「瞳様、このような雑務は私たちが!」
「いいえ、私が!」
一度は落ち着いた女子生徒たちがここぞとばかりに瞳様に詰め寄る。
どうやら憧れの瞳様の役に立ちたいようだ。目がキラキラと輝いていて、頬が紅潮している。……少し怖い。
「君たちの手を煩わせるわけにはいかないから、気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとう」
瞳様が微笑むと顔を真っ赤にして頬を手で覆う女子生徒たち。これは学芸会かなにかなんだろうかってくらいのやり取りに見えてしまう。
瞳様に従って女子生徒たちは教室へ向かい始める。振り向くと、瞳様とすぐ後ろにスミレ様が逆方向へと歩いているのが見えた。
何故かスミレ様はふらふらとした足取りに見えたけど、もしかしたら体調でも悪いのだろうか。
……でも、なんか妙だ。



