この瞳様とスミレ様といえば、常に行動を共にしていて時折どこかの部屋に二人っきりで消えていくんだとか。

そんな怪し〜い噂がある。ファンの子達はそんな二人の仲を妄想して、きゃっきゃ騒いでいるみたいだ。


「あら、なにかしらコレ。……忍法すっぱいでござる?」

近くにいた女子生徒が細長い何かを拾って不思議そうに首を傾げた。それは『忍法☆すっぱいでござる』という名前の駄菓子だった。

……何故、庶民の駄菓子がここに落ちているのだろう。


『忍法☆すっぱいでござる』という名前の駄菓子は一袋に三つガムが入っていて、その中の一つがすっぱいガムというロシアンルーレット庶民菓子だ。

前世で子どもの頃によく食べていたけど、どうしてあんなのがここにあるんだろう。お嬢様達が集うこの学院であんな駄菓子を持っていそうな人はいなさそうなのに。


「あら……ガムと書いてありますわ」

「ガムってなんですの?」

「ここに賞味期限が記載されていますわ。食べ物なのかしら」

速報:ここのお嬢様はガムを知らない。

そんなことってあるんですか。でもそもそも上流階級のお嬢様なら、食べる機会も巡り会う機会もないのかな。