あのとき、二階にいたのが希乃愛ではないかと思ったけれど、瞳に聞いたところ彼女には終業式に出るように言ったそうなので、おそらくあの場にいた女子生徒は彼女ではない。

ということは、私たち以外に何故かあの場にいた人間がいるということだ。

もしかしたら、その人物が今回の件に関わっているのかもしれない。


「確かにプールに落ちたことは災難だったけれど、妙なデマが広まっていると知れてよかったわ」

「真莉亜様……っ」

顔を上げた希乃愛の頬には涙の筋ができていて、それをポケットから出したハンカチで拭う。

なんか私、お嬢様っぽい。

少し浮かれて緩みかけた頬を引き締めて、眉根を寄せる。


「それにしても誰がデマを流しているのかしら」

「私にもわからないんです。なにかわかり次第真莉亜様にご報告いたします」

「ありがとう。けれど、無理はしないでね」

「はい!」

中等部の知り合いは花ノ姫関連でいるものの、今回は花ノ姫ではない子達の間で流れたデマのようなので希乃愛から情報を得られるのは有難い。

一体誰がなんのためにこんなデマを流しているんだか。