あの後、替えの制服を借りて一足早く帰宅した。

午後になり、スミレから借りた『初恋想』を読もうかなとカバンから取り出したところで、思わぬ訪問者が現れた。


今にも泣き出しそうだったので、他の人に話を聞かれない方がいいと思い私の部屋に通すと、彼女はカバンを握りしめたまま深々と頭を下げた。


「真莉亜様、申し訳ございませんでした!」

希乃愛は声を張り上げて謝罪をすると、そのままずっと頭を下げている。

微かに肩が震えていて、いたたまれなくなりそっと肩に手を触れた。


「希乃愛、頭を上げて」

「私……っ、真莉亜様を疑ってしまうなんて。それにあのあとプールに落ちたと聞きました。本当に申し訳ございません」


ぽたりぽたりと涙が溢れ出したようで床に大きな雫が落ちていく。


「ええっと……泣かないで? 私なら大丈夫よ」