文芸部が二ヶ月に一度発行している冊子、『初恋想』。

それの十一号を読んだスミレがすごく気に入った作品があったらしく、ファンになったのだとか。

そのことが広まり、十一号だけすべて捌けてしまい文芸部には問い合わせ殺到だそうだ。

ほとんどスミレのファンたちが問い合わせているだろうけど、他にもそんなに話題なら読んでみたい!という人たちもいるみたいだ。


その十一号をスミレは人に勧める用にもともと二冊くらい貰っていたらしく、私と浅海さんに貸してくれた。

浅海さんは本が好きみたいだけど、私はそういうわけではない。ただ少し気になったことがあって読んでみたいと思ったのだ。


賑やかな空間を裂くようにアナウンスが流れ、クラスメイトが次々に教室から出て行く。

そろそろ終業式が始まるようだ。


立ち上がると空腹を感じ、腹部に手を添えて小さなため息を漏らす。先生の話っていつも長いんだよね。

終業式の途中でお腹鳴らないといいんだけど。やっぱり朝はパンじゃなくてお米じゃないとお腹がもたないや。


空腹を我慢しながらよろよろと生徒達の波に乗って廊下に出ると、誰かとぶつかってしまった。