スミレが何かを思い出したように目を見開いて、声を上げた。
「実はこの中にね、ワサビクリームが入っているケーキがあるの。当たった人は完食しなければならない決まりなのよ。うふふ、どなたが当たるかしら」
そういえばまだ誰も当たっていないみたいだ。どうしよう。
私もショートケーキ食べたいけど、あれがワサビクリーム入りだったらと考えると躊躇してしまう。
「へえー! ワサビ好きだから俺食べたいなぁ」
天花寺発言にスミレが小さく舌打ちをしたのが隣の私には聞こえてしまった。
どうやら浅海さん以外の男子には冷たいみたいだ。
「ふぐっ!」
「スミレ?」
タルトを食べたスミレが表情が歪み、涙目になっていく。これはスミレがワサビーガールになってしまったみたいだ。
「うっ、うぅうう……瞳ぃい」
「ワサビクリームに当たったの?」
半泣きのスミレの背中をさすりながら、瞳が紅茶を飲むように促している。
スミレの目の前に座っている桐生が威圧的な眼差しで二人のことを眺めている。ケーキ食べているときくらいにこやかにならないのかな、この人。



