「ん〜、噂でちょっとね」
「う、噂?」
「東校舎でいちごちゃん達を見かけるって聞いたから探してみたらここだったってだけだよ〜」
「いちごではありません。雲類鷲です」
「ごめんごめん、雲類鷲ちゃん」
雲類鷲ちゃんって……いつも名字を呼ばれるときは、さん付けだからむず痒い。
それにしても噂が流れているなんて知らなかった。
私達がなにをしているのかは多分バレていないみたいだけど、特にスミレの妙な言動を目撃されないように気をつけないと。
……とはいっても今日早速目撃されたけど。
そんなことを考えていると、生クリームを綺麗に洗い流したスミレと瞳が戻ってきた。
普段がゆるく巻いたようなふわっとした前髪だからか、濡れた前髪を横に流しているスミレは、いつもよりも少し大人っぽく見える。
「あ、あの先程はその……」
何故だかもじもじとしているスミレが浅海さんにブレザーの袖を控えめに掴んで引っ張った。



