私は実家がお父さんの借金のカタに取られそうになっていること、それを回避するために無茶な課題に挑んでいることを手短に話した。
『あれっ、あのひと逃げちゃったの。そんな人じゃないと思ったんだけどなあ』
どうやら、保証人になってしまったのは真実で、本人の記憶もあるらしい。お人よしな父に見えないところで、がっくりと肩を落とす。
『それで、いい絵は見つかりそうなのか?』
「まだよ。途方に暮れているところ」
『んーじゃあ、自分で描けばいいんじゃないか? 美羽も絵が描けるんだし。星の数以上にある既存のものから選ぶより、イメージに合う絵を描いた方が早い』
無責任なお父さんの言葉に、頭の中でぶっつんと何かが切れたような気がした。私はお父さんのせいで窮地に立たされているのに、それを何とも思わないで勝手なことを言わないで。
「あのねえ……私はもう絵を諦めたの。今は一般の会社員」
『は? なんでそんなことになっているんだ?』
私が就職したことも知らなかったお父さんはすっとんきょうな声を上げる。最後に会ったのは、まだ学生のときだっけ。



