洗ったばかりの顔が火照る。私、何を考えていたのか……。
自分のポーチからメイク用品を出し、簡単にメイクをしてから社長の前に出ていこうと思った。そのとき。
「おい、遅いけど生きているか?」
ガチャッと不躾な音がして、突然バスルームの扉が開かれた。
「きゃああああ!」
思わずすっぴんを隠す。
「ど、どうして急に開けるんですか。トイレに座っていたり、シャワーを浴びていたりしたらどうするんですか」
「鍵が開いていたからだ。無論、ちゃんとそれらしき音がしないことは確認してから開けた」
音、確認するな~! トイレで用を足していたらどうするのよ!
お下品な事を考えてしまい、その恥ずかしさを誤魔化すために片手で顔を隠し、片手で社長の腕を押してバスルームの外に出そうとする。
「メイクしたら出ていきますから! お忙しいでしょうから、先に帰っていただいて大丈夫ですよー!」
全力で押すけど、社長はびくともしない。
「もう夜だぞ。あとは飯食って風呂入って寝るだけなんだから、メイクなんてしなくていいだろ」
「そういうわけには……っ」



