「社長、ずるいです……」
もしかして、お父さんの絵が入荷されたって知っていて、私を連れてきたの? こんなことされたら、泣いてしまうじゃない。
お父さん、たくさんの素敵な絵を残してくれているんだね。今どこにいるの。元気にしている? 私のこと、たまには思い出してくれている?
零れてくる涙を指で押さえる私を、社長がそっと抱き寄せる。その仕草があまりに優しくて、震える唇を抑えられなくなった。
大好きだったお父さん。どうか、一度帰ってきて。顔を見せて。会いたいよ。
なかなか表に出せない素直な思いは、涙になって零れ落ちた。社長は黙って、私の髪を優しくなでていた。



