独占欲高めな社長に捕獲されました

お父さんを捕まえて保証人の件を詳しく聞きたい気持ちもあるのだけど、とにかく会いたい。思えばおじいちゃんの葬式さえ、連絡がとれなくて来られなかったんだった。

「残念だったな、横川」

「うう～……」

　ぽんと私の肩をたたく社長の顔は、どこか嬉しそうだった。勝ち誇ったみたいな顔で笑っている。

「でもまあ、いいじゃないか」

　彼は私の肩に触れたまま、壁の作品に視線を移す。

「自分の父親が、こんなに素晴らしい作品を残していることがわかったんだから。おじいさんと同じように、世界中の人々の目を楽しませている」

　私ももう一度、お父さんの作品を眺めてみた。おじいちゃんの作品のような温かみとは別のものを感じる。生きる人々の、それぞれの生命力の強さとでも言おうか。

「このような画家の娘であることを誇りに思え」

　社長の言葉を聞き、男性がびっくりした顔で作品と私の顔を交互に見た。

　幼い私を置いていって、代わりに借金を背負わせる。それをまったく知らないで、好きな絵を描いて暮らしている。

　そんなひどい父親でも、あなたは誇りに思っていいと言ってくれるの？

　絵の中にはどこにもお父さんの姿はない。それでも、彼の息遣いや体温をそこから感じられる。