午後は松倉先輩も他の先輩方も忙しかったらしく、外出して戻らなかった。そのおかげで追加の雑用を言い渡されることなく、無事に定時を迎えることができた。
西明寺社長との約束は六時。まだ少し時間がある。他の社員がどんどん帰っていき、人気が少なくなったころを見計らい、席を立った。向かうは、課長のデスクだ。
「あのう、課長」
「ん?」
課長は人の良さそうな顔を上げた。
「例のプリムーンルームの評判、どうでしょうか」
おそるおそる聞くと、課長はにこりと笑った。
「うん、好評みたいだよ。でも今日はどうした? 横川さん、あまり仕事の評価について自分から聞いてくることなかったのに」
やはり唐突すぎたかな。課長は首を傾げて私の顔を不思議そうに見つめる。
「ええと、あの……私、もっと色々なことにチャレンジしてみたくて」
「ほう」
「絵画が好きで、知識もあります。それに関係したお仕事があれば是非、やらせていただきたいです。もちろん、それ以外も。大学で色彩の知識を叩きこまれたので、役立てたいと思っています」



