独占欲高めな社長に捕獲されました


 そうか、周りが私に冷たいのは、普段からのなんとなくやる気がない気持ちが影響しているのかも。淡々と仕事をしていてるだけで、本心では“やりたくない”と思っていた。それは、同じような仕事を一生懸命やっている人たちにとっては目障りだっただろう。

「これどうぞ、社長」

 そうだよ。一生懸命、興味のある仕事に没頭すればいい。誰も付け入る隙がないくらい。

 私は手つかずのおにぎりを、社長に手渡した。昆布の方だ。

「戻って仕事します。ありがとうございます」

 それを手のひらに渡された社長は、ふっと微笑んだ。見たことがないくらい、柔らかく。

「無理するな。能率が下がるだけから、休憩はきちんととれ。栄養もな」

 社長はそう言うと、胸ポケットからバー状の栄養補助食品を取りだした。もしかしたら、社長もなかなか時間がなくてこういうもので食事を済ませているのかもしれない。

「交換だ。これはなかなかうまそうだから、いただいていく」

 高級スーツに不似合いなラップに包まれたおにぎりを持ち、社長は立ち上がった。

「もう行かれるんですか?」

「ああ。暇じゃないんでね」